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●フォーラム「アジアの安全保障と日本」2010年3月4日


防衛省 防衛政策局防衛政策課長 鈴木敦夫氏

◎2010年3月4日 フォーラム「アジアの安全保障と日本」


防衛省 防衛政策局防衛政策課長 鈴木敦夫氏

フォーラム

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NPOフォーラム (例会No.137)フォーラム「アジアの安全保障と日本」
ゲスト:防衛省 防衛政策局防衛政策課長 鈴木敦夫氏
2010年3月4日

【レポート】
(記 吉岡健太郎)
1、わが国周辺の安全保障環境
2、わが国の防衛政策の基本と「大綱見直し」作業
3、日米同盟と米軍再編
4、弾道ミサイル防衛
5、国際的な安全保障活動の改善

1、わが国周辺の安全保障環境
中国ー
 わが国周辺の安全保障環境は中国・北朝鮮・ロシアを中心に様々な問題を抱えており、
中でも中国の09年の国防費は4729億元、一元15円で換算すると7兆0930億円
と日本の4兆7028億円を2兆円以上上回っている。
また、潜水艦・駆逐艦・戦闘機の近代化を進め、わが国周辺で活発な活動を行い、
近年では空母の製造を示唆する発言も見られている。
北朝鮮ー
 北朝鮮においてはノドン・テポドンで知られる弾道ミサイルが問題となっており、
中でもテポドン2の射程は約6000kmと広大な射程を有している。
北朝鮮は09年4月5日と09年7月4日に実験を行っており、09年4月5日に
ついては「運搬ロケットで人工衛星を軌道に正確に進入させることに成功した」と
発表しているが、そのようなものとは到底考えられず、いずれにしろ弾道ミサイル
について有益なデータを得られたものと考えられる。北朝鮮のミサイル開発の急速
な進展の背景としては外部からの資材・技術の流入も考えられる。
 わが国の安全保障に与える影響等については、ミサイル性能の向上、ミサイルの移転
・拡散、それによる周辺地域のみならず国際社会全体に不安定をもたらす要因となって
いる。
また、懸念されるのはミサイルに核弾頭を搭載することであるが、北朝鮮による核開発
の現状については、北朝鮮が極めて閉鎖的な体制を取っていることもあり、断定する
ことはできないが、核兵器計画が進展している可能性は十分にあるといえる。核兵器を
ミサイルに搭載するのは核の小型化の技術が求められるが、当該技術の進度は定かでは
無い。しかし、米国等が1960年代に獲得した技術があれば核兵器の小型化・弾頭化
は可能な為、比較的短期間のうちに実現に至る可能性は排除できない。
ロシアー
 経済・財政状況の好転を背景として停滞していた装備の近代化を積極的に推進すべく
国防費を増加させており、2009年の国防費は2005年のおよそ2・5倍、2009
年の国防費は2008年の38%増となっている。主に原潜・弾道ミサイル・爆撃機等
の近代化を進めており、エンゲリス空軍基地・ウクラインカ空軍基地を中心に活発に
長距離哨戒飛行を行っている。
核兵器保有・懸念国の現状ー
 現在の各国の核保有状況は、NPT(Nuclear Non-Proliferation Treaty)で核保有国
とされている米国・ロシア・英国・フランス・中国以外に、事実上の核保有国として
インド・パキスタン・イスラエル、懸念国としてイラン・北朝鮮があげられている。
通常戦力の代替を大量破壊兵器などで補おうとする国家の存在が兵器及び技術の移転・
拡散の可能性、自国の国土や国民を危険にさらすことへの抵抗が少ない国家により大量
破壊兵器が実際に使用される可能性、関連技術・物質の管理体制が不安な国家が存在する
ことによるテロリストへの関連技術・物質の移転・流出の可能性、テロリストへの移転
・流出が技術を持たずとも関連物質の入手によりテロの手段として活用する可能性が懸念
されている。
弾道ミサイルの主な拡散状況ー
 旧ソ連からエジプトを介してスカッドBが北朝鮮に渡り、北朝鮮においてスカッドC
・ノドン・テポドンと改良されイラン・シリア・パキスタン等に拡散しているとの指摘
がある。北朝鮮は各国にミサイルを売却することで資金を獲得し、ミサイルの開発費に
充てていると考えられる。また、ミサイルを売却した各国の実験データを北朝鮮が入手
することや、パキスタンにおける核濃縮技術が北朝鮮に流入している可能性も考えられる
ため、北朝鮮の動向だけではなく各国の動向にも注意する必要がある。
日本のシーレーンと周辺の海賊発生状況ー
 日本の主なシーレーン(海上輸送路)は南シナ海を通過しマラッカ・シンガポール海峡
を経由しペルシア湾に至るルートと太平洋を通りインドネシア南のロンボク海峡を通過
してペルシア湾に至るルートがある。マラッカ・シンガポール海峡やアデン湾では海賊
襲撃事例が多発しており、2009年には日本関係船舶が5件の襲撃を受けている。
日本は海上輸送の全貿易量の99%以上(重量ベース)を依存しているため、海路の安全
確保は重大な課題と言える。
 また、グローバルコモンズとしてはサイバー空間や宇宙も重要な存在である。サイバー
安全確保は米中経済安全保障再検討委員会において米国が中国のサイバー戦能力に警鐘を
鳴らしているが、中国は反発している。

2、わが国の防衛政策の基本と「大綱見直し」作業
 わが国の防衛政策の枠組みは日米安全保障条約・日本国憲法・国際連合憲章を軸に
「国防の基本方針」等を基本として定められており、防衛力の在り方と保有すべき防衛力
のストックを規定した「防衛計画の大綱」が、五カ年の主要装備整備計画として「中期防衛
力整備計画」が、各年度の年度予算が定められている。
防衛計画の大綱は昭和51年・平成7年・平成16年に定められており、それぞれ東西冷戦下
において国民に対し防衛力の目標を示した51大綱、東西冷戦の終結後の国際貢献等への
国民の期待の高まりを反映した07大綱、国際テロや弾道ミサイル等の新たな脅威に対し
抑止重視から対処重視に転換する必要性を示した16大綱が公表されている。
なお、平成21年には新たな防衛計画の大綱が定められる予定であったが、政権交代により
十分な検討を行う必要があることから、平成22年に結論を得ることとされた。

3、日米同盟と米軍再編
 アジア太平洋地域には、依然として不透明・不確実な要素が残されており、このような
状況においては、わが国として、@自らの防衛力を整備し、維持させつつ、A日米安保体制
の下で米軍のプレゼンスを確保し、Bその抑止力をもって我が国の安全を確保していくこと
が最も現実的かつ適切である。
米軍による施設・区域の安定的な使用は、日米の共同対処のために重要であり、在日米軍は
抑止力としても機能。また、米軍の支援の基盤となるものであり、在日米軍はわが国の防衛
及びアジア太平洋地域の平和と安定の維持にとって不可欠である。
 平成21年11月13日に日米首脳会談が行われ、鳩山総理より、日米同盟を深めることの
一環として、来年の日米安保条約改定50周年に向けて、日米同盟の深化のための協議プロ
セスを開始したいと提案し、オバマ大統領はこれに同意した。更に、鳩山総理は、世界情勢
や時代は変遷しているので、日米同盟もそれに合わせて発展させていく必要がある。例えば、
日米安保体制の関係では、拡大抑止、情報保全、ミサイル防衛、宇宙等、従来の協力分野の
みならず、新しい課題も含む協力の強化を進めていきたい旨、更に、防災、医療、保険、
環境、教育分野といった分野においても日米の協力関係を、特にアジア太平洋を中心に進め
ていくことにより、同盟関係を深めていきたい旨述べ、オバマ大統領もこれに賛同した。

4、弾道ミサイル防衛
 弾道ミサイル防衛(BMD)整備構想・運用構想は、発射された弾道ミサイルを各種セン
サーで探知・追尾し、イージスBMDシステムによる上層(大気圏外)での迎撃、次にペト
リオットPAC−3による下層(大気圏再突入時)での迎撃のプロセスをとる。海上自衛隊
の海上構成部隊、航空自衛隊の警戒管制部隊、高射部隊が任務にあたる。
ミサイルの迎撃はイージスBMDシステムとペトリオットPAC−3の二段階で行われる。
イージスBMDシステムは飛来する弾道ミサイルをミッドコース(大気圏外)において迎撃
する防御システムであり、2〜3隻でわが国全域を防護することが可能である。ペトリオッ
トPAC−3は飛来する弾道ミサイルをターミナル段階(大気圏内)において迎撃する防御
システムであり、一個FUにつき半径数十kmの範囲を防護。事態に応じて機動的に移動・
展開する。
 配備状況としては、平成19年3月に第一高射群第四高射隊(入間基地)にペトリオット
PAC−3が配備され、防衛省・自衛隊として弾道ミサイル迎撃能力を始めて保有する事と
なった。その後、平成22年2月までに第一高射群(習志野、武山、霞ヶ浦、入間)
浜松の高射教導隊・第二術科学校・第四高射群(饗庭野、岐阜、白山)及び第二高射群の
一部(芦屋、築城、高良台)への配備が完了している。イージス艦については、平成21年
11月までに「こんごう(佐世保)」、「ちょうかい(佐世保)」及び「みょうこう(舞鶴)」
の3隻に対し、弾道ミサイル対処機能の付加が完了しており、平成22年度にイージス艦
「きりしま(横須賀)」を改修する予定である。

5、国際的な安全保障活動の改善
 現大綱においては、わが国の安全保障の基本方針において、目標として国際的な安全保障
環境を改善し、わが国に脅威が及ばないようにすることが記述されている。また、目標達成
の手段として国際社会との協力をあげ、国際社会の平和と安定がわが国の平和と安全に密接
に結びついているという認識の下、わが国の平和と安全をより確固たるものとすることを目的
として、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動を主体的・積極
的に実施することとしている。また、防衛力の在り方として、国際的な安全保障環境の改善
のための主体的・積極的な取組を示しており、自衛隊による国際平和協力活動としては、
アジア、中東、アフリカ、中米など、約20の国際活動を実施し、のべ約3万人に及ぶ自衛
隊員を派遣している。さらに、防衛首脳レベル・実務レベルにて防衛交流の拡大を図っており、
多国間での安全保障対話が広がっている。

(質疑応答)
Q、普天間問題について、米軍機能の一部はグアムに移転するが、一部を残すのは何故か。
A、グアムに移転するのは司令部等であり、在沖縄海兵隊は、その即応性等を維持するために、
  陸上部隊やヘリコプター部隊は沖縄に残すとしたのが現行案である。しかし、現在は、
  この案も含めてゼロベースで検討がなされている。
Q、自衛隊における文民統制の実態は。
A、文民統制は政治の軍事に対する優位が本旨であり、その意味で文民統制に問題は無いと
  考えている。
Q、中国・日本のシーレーンが重なるが、中国の脅威をどう捉えるか。
A、中国を脅威とみなしているわけではない。米ソ対立の時代とは異なり、経済的にも互い
  に深く依存関係にある。地域の平和と安定は日中両国にとって重要である。シーレーン
  の安定も同様であると考える。ただ、中国の防衛政策等が不透明なことがあるため、
  透明性の向上を働きかけている。防衛交流、安保対話はこのコミュニケーションの重要
  な柱になっている。
Q、原発におけるミサイル防衛の現状は?
A、SM−3搭載イージス艦2〜3隻で、原発を含め日本のほぼ全域をカバーしている。

●「禁無断転載」

【感想】
(MM)
とても興味深く意義のある講演会でした。気にはなっていたけど自衛や国防に
ついてわざわざ勉強する気にもならないので、このようにわかりやすく本質が
わかっている方にお話していただけるのはとても良いです。
今後、希望するフォーラムー
日本の置かれている状況には、興味があるので、今回のような国防、自衛隊、
憲法などについて、今回のように本質をわかっておられる方のお話が聞きたいです。

(HM)
講師の先生の話がとてもわかりやすく、資料も充実していて、非常にためになりました。
親しみやすく話しやすい方だったのもよかったです。
中国・ロシア・北朝鮮などの軍事情報が、具体的にわかってとてもよかったです。
質疑も、非常に的確な質問が多く、普天間問題もポイントがよくわかりました。
懇親会もメンバーにめぐまれ、楽しい話が出来ました。ロシアの方がおられたのには
びっくり。今後も機会があれば参加したいです。
気がついたことなどー
会場の段取り・片付けなどは、参加者も手伝うようにしてもいいのではないかと思います。
今後、希望するフォーラムー
アジア各国、アジア外交関係、特に中国・韓国

(IK)
まずはタイムリーな題名での企画で良かったと思います。
日本の安全保障の実態がかなりわかったような気がします。
(かなり表面的な解説であったことは話の内容から否めないでしょう。
当日はロシア大使館武官補佐官が参加するなどオープンでもありました。)
その後の懇親会が結構本音の話が聞こえたように思います。
参加者も多士多才で会ったことも話に充実感が加わり良かったと思います。

●「禁無断転載」