●「特定非営利活動法人 アクティブ ミドル 国際協会」のミッション=アクティブなミドルの仕事と生活を応援するNPOです。少子高齢社会に即して新産業をつくる「起業フォーラム」や「国際交流活動」「ネットワーキングの集い」「見学会・街歩き」などを開催しています。またエイジレス社会の進展を促進する種々の活動を行っています。




◎フィンランドフォーラム・レポート

●「フィンランド・フォーラム」レポート(会員 松尾秀人記)
ー禁無断転載ー

矢田龍生氏 フィンランドシステムとは

フィンランドシステムを読み解くキーワードとは、ノキアやリナックス社
に代表されるIT産業であるが、その一方で王家もない牧歌的な国である。
情報通信で言えば、ボーングローバル企業を生み出しているが、その背景
にはビジネスを生み出す生態系が存在している。その要素とは
@ベンチャーを公的機関が支えているA大学が果たす役割Bクラスター戦略
Cボーングローバルの4つがある。
まず公的機関のコンサルティングは、日本と違い私的企業のようなもの、
つまり予算は国から100%ではなく、自分自身で稼いでいる部分がある。
つまり、ある部分は無料である部分は有料となっている。フィンランドの
公的機関は厳しい。やさしいお金ではない。また役人ではなく専門性の
持ったスタッフが運営している。そしてリスクの高い分野に積極的に展開
し、民間企業との住み分けができている。国の一部が高いリスクを背負
っている。
大学については、財務的には独立しているが、学費は無料である。
例えばヘルシンキ工科大学は、国は50%で後は大学自身で稼いでいる。
つまり公的機関のプログラムと企業の共同研究などで賄っているのである。
フルタイムビジネスマンとフルタイム学生は両立できるシステムとなって
おり人事交流が盛んである。
ノキアはフィンランド企業をサポートするのかといえば、ノキア社はグロー
バル企業で、またノキアの株主はアメリカの年金ファンドとなっており本社
スタッフには、インド人やハンガリー人など多国籍の従業員が働いており、
その共通言語も英語となっている。したがってノキア社はフィンランド企業
とはもはや言えない。しかし、ベンチャー企業にはノキア出身者が多く、
そういう意味ではノキアはフィンランドに貢献していると言える。
 クラスター戦略についてであるが、クラスターとはぶどうの房のような
もので、少ない資源で大きな結果を生むものである。例えばオウルの町は人口
が12万人しかなく1962年当時はIT産業などまったくなかったが、現在
では北欧のシリコンバレーと言われ、4600人がノキアで働いている。また、
オウル大学には1万6000人の学生が学んでいる。
オウルクラスターは、地元の私企業・自治体がネットワークを組み、共通の
インフラ・顧客・スキルベースを使っている。
1つの目的を持ってネットワークを組んでいくと、大学、ノキア、地元企業
にノウハウが蓄積されそれによってイノベーションがどんどん起きてくる
ものである。
携帯電話のテストインフラであるオクトパスネットワークというものもその
一つである。
なぜ、クラスターができたのか?大学での人的リソースや研究機関や公的
機関のサポート、大企業などがすでにあったことである。また、
@ローカル政府のリーダーシップAノキアの飛躍B自発的なネットワーク
が生まれやすかった。ことなどが起業家村の誕生に役に立ってきた。
そして、リーダーシップと成功事例をつくること、またあまり広げない
ことなども重要なことである。
 ボーンググローバルであるが、伝統的な国際化のステップは、国内市場
→近隣海外市場→国際マーケットとなるが、ボーングローバルでは、設立
してすぐにグローバル市場へ出て行くものである。ターゲティングとして
は、グローバルニッチ市場である。グローバルニッチとは、国内市場だと
規模が小さすぎて商品供給先として成立しない。しかし、グローバル規模
で考えると市場が成り立つものである。
 まとめるとフラット化した世界ではイノベーションこそが差別化要素で
あるが、協力と協業によるソフトパワーの最大化によってこれを乗り越え
る。そして、イノベーションを産む生態系を日本も作るべきである。

質問1)生態系を作る上で日本で阻害していることは何か?

フィンランドと日本の違いは。フィンランドは危機感を持っているが日本
は豊かでモチュベーションが低い。

駐日フィンランド大使 ヨルマ・ユリーン氏

皆様にここでお話しできることは光栄に思います。私はフィンランド人と
してフィンランドについて紹介します。
日本ではフィンランドの関心が高まっている。それは、@教育制度 Aノ
キア社 B高い国際競争力 C安全で汚職が少ない などである。
フィンランドは、少ない人口ですが面積は日本と同じ。1人当たりの購買
平価によるGDPほぼ日本と同じ、ただし出生率は1.79 日本は1.29 この
数字は人口を維持するギリギリの数字である。首都ヘルシンキは人口56
万人で日本との共通点は中国とロシアという大きな国があること。公用語
はスウェーデン語とフィンランド語 北欧で唯一のユーロ導入国である。
75%が森林で覆われている。
共和制で一院制。女性が国会議員の42%を占め、大統領も女性である。
また、汚職が少なく環境にやさしい国。空気と水がきれいで環境技術や
研究開発水準が高い国である。
フィンランド経済は4%の成長率で好調。輸出がGDPの45%を占めている。
国内マーケットが小さいため生産の90%を輸出している。また、財政
赤字は小さくOECD諸国で最も低いものとなっている。失業率は7%。
フィンランドは、第2次世界大戦後 産業の多様化が行われた。エンジ
ニアリング、製紙機械、また3つ目の柱としてITがある。ノキアだけでは
なくほかにもICTの企業がある。
ノキアは世界市場の40%を占めている。中国の北京では最も税金を払っ
ているのがノキアである。
またフィンランドはR&Dに力を入れてきた。GDPの3.5%でトップとなって
いる。女性の研究職は40%に達している。
多くの大学教授は、民間企業と関係している。
教育については、フィンランドシステムと言われる教育制度は福祉システ
ムの一部である。
税金が高く、一定の水準の福祉を維持しながらこれを下げる努力も必要で
ある。
フィンランドの学力は非常に高いが政府の教育支出はOECDの平均並みで
私立大学というものはない。
高い学力の背景には、@基礎教育がしっかりしている。A学校に裁量が
与えられている
A 教育レベルが高い(小学校教師でも修士号を持つ)C生徒とのコミュニ
ケーションをはかりながら授業を行う。教材もそのようなものとなっている。
D落ちこぼれや問題のある生徒に対しては無料で補習を行っている。
などがある。
教育制度の特徴としては、OECD諸国の中でできる子供とできない子供の
差が少ない。
義務教育は、日本にないシステムで高校は2年から4年となっている。
つまり2年で卒業できるし、スポーツなどをやりたければ4年かけてゆっ
くり卒業することもOKとなっている。フィンランド人はさまざまな言語を
学ばなければならない。小学校3年からはフィンランド語、スウェーデン
語のどちらか、オプションで英語も学べる。中学からは英語、高校からは
もう一つの言語を学ばなければならない。こういった言語の先生はフィン
ランド人であるのも特徴である。
フィンランド語、スウェーデン語と英語は異なる言語なので生徒にとって
は大変なのもまた事実である。
フィンランドでは低学年では趣味に十分な時間を与えられている。
小学校から大学まで無料で、大学はすべて公立である。また76000円
の手当てが大学生に支給される。フィンランドでは授業は英語で受けるこ
ともできる。
フィンランドは男女同権で外で仕事をしている女性が多い。
フィンランドシステムをまとめると
@ 男女同権
A 教育制度
B マクロ経済政策
C 変化を受け入れる体制
D R&Dへの高い投資
E イノベーション政策をしっかりやって行く
F 知識情報社会を推し進めていく
G オープンで国際性を持った国である

フィンランドの課題としては
@ 高齢化社会
A 福祉国家の維持
B 情報化社会
の対応の課題がある。

質問1) 高齢化社会に対応するには、移民政策も必要だと思いますが

すでに医師はロシアやバルト3国、看護師はフィリピン、インドネシア
から受け入れている。

(矢田)
 フィンランドの医療は無料ではあるが、風邪では見てくれないし盲腸
程度では2日間しか入院できない。緊急性を要するものだけが国が面倒
をみる。

(了)