●「特定非営利活動法人 アクティブ ミドル 国際協会」のミッション アクティブなミドルの仕事と生活をお互いにサポートするNPOです。 高齢社会の新産業をつくる「起業セミナー」や駐日各国大使、公使を招いて 「国際交流フォーラム」のほか「ヒューマンネットワーキング」「見学会・街歩き」 などを開催し、エイジレス社会を推進する活動を行っています。


●「社会起業家紹介フォーラム」2009年7月16日


第3世界ショップ/地球食/地球交流広場ONE 事務局長 竹広 隆一氏

◎2009年7月16日 「社会起業家紹介フォーラム」


第3世界ショップ/地球食/地球交流広場ONE 事務局長 竹広 隆一氏

会場内

(動画)
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【レポート】
NPOフォーラム (例会No.124)「社会起業家紹介フォーラム」
ゲスト:第3世界ショップ/地球食/地球交流広場ONE 事務局長 竹広 隆一氏
2009年7月16日

昨今話題になっているフェアトレードの第1人者でもある竹広隆一氏による第3世界
ショップ(フェアトレード)の紹介と社会起業について話を伺った。

第3世界ショップとは、別名、フェアトレードとして、オルタナティブトレード
として、知られる活動で、第3世界(発展途上国)との取引を行う事業であるが、この手
によくある単なる援助というわけではない。第3世界の人々と対等な立場で、お互いが
協力して、ビジネス展開をする。そして何より営利目的ではなく社会起業としての役割
を担っているというのが大きな特徴のひとつである。一石三鳥くらいのすばらしい取り
組みだと感じた。
創始者の片岡勝氏は、銀行に勤務していたが、管理職になる前に”地域を盛り上げる
ためのボランティアがやりたい”という思いから、銀行を去った。しかし、漠然とした
思いだけでは、なかなか何をやっていけばよいか分からないということもあり、暇に任
せて海外に旅に出たりしていた。
クリスマス前に北欧に行ったことが、彼の人生を変えた。ある小さな民芸店で小物を買
っている人と話をしたところ、”貧しい国の人が作ったものを買うことで、こちらは
クリスマスプレゼントを購入でき、その売主である貧しい国の人たちの助けになる”という
答えが返ってきた。
片岡氏は、これぞ自分がやるべきことだと思い、日本に帰って早速ニュースレターを発信
し、ペルー産のコーヒー販売から行うことにした。
第3世界ショップの活動にあたり3つのキーワードがある。1つめが「自立」で、お互い
を認め合うということ。2つめが「協同」で、お互いを理解し、弱い部分を補い合うこと。
3つめが「共生」で、共に生きることで利益追求が第1ではないということ。この3つの
キーワードを心得として事業を行っている。このビジネスのテーマは共感。生産者との
対等な関係で、理念を共感し、持っているものを持ち寄り合うこと。進めるにあたり気を
つけたこととして、まず第一に大事なことが、生産現場のことと海外事業の両方が分かる
現地リーダーとの連携が必要で、原則、生産原価方式にするということである。生産者に
価格を設定してもらうというやり方。生産者側の負担にならないように、前払い制、継続
契約なども検討に入れ、買うだけでなく、人、物、金でのサポートも十分検討しなければ
ならない。お互いの文化を学ぶことももちろん必要である。
第3世界ショップは1986年にスタートし、現在では、26カ国、83の生産者と取引し、
国内500の小売店を持つにまで至った。組織としては、ピラミッド型ではなく、スタッフ
全員が対等な水平な組織、給与に関しても、毎月、自分の自己評価、他人評価を参考に
話し合って決めていくという方式を取っている。常識や前例に囚われず、何でもゼロベース
で議論して決める。
現在年間売上は10億円。日本全体でのフェアトレードの売り上げは、75億円になった。
それでもまだヨーロッパの10分の1。大事なのは出会い。
勿論、失敗の方が多いが、それでも24年続いているのは、その出会いがあるからである。
竹広氏自身が、ここに辿り着いたのは、学生時代、旅がしたいと思い、1年休学をして南米
ペルーに向かった。なぜペルーだったのかというと、当時日系人のフジモリ大統領を生ん
だ国とはどんなところだろう、北米と南米との違いを知りたいという理由からであった。
そんな経験をした後、在外公館派遣員となり、再度2年3ヶ月ペルーに駐在することとなった。
なぜ、この第3世界ショップを選んだかー、ペルーの問題を肌身で感じたため、帰国してから
地域のための仕事がしたいと思うようになり、NPOの資料を調べ回ったが、ほとんどのNPOが
90%以上が寄付金でなりたっているという現実を知った。しかし、この第3世界ショップ
だけが、90%以上が売り上げで、自立して収入を得ていたのだ。

竹広氏がペルーで感じた日本との違いは、とにかく交通事故が多い、道路に穴をあけてそこ
に落ちた車を襲うという窃盗がいたり、コピー商品が横行したりしている。田舎から都会へ
仕事を求めて人は流れているのだが、結局、仕事もなく都市もどんどんスラム化していって
いる。これらの問題の方策を得る必要を感じこの世界に入った。
実際に行った活動に関して、ペルーのコーヒー、フィリピンの三角紙を紹介してくれた。
南米コチャパンパ村の場合、コーヒー以外仕事はない、しかしすべての生産者と取り組む
ことも出来ないので、パートナー選びにも、苦労した。また、品質にばらつきがあるため、
品質改善策を練る必要があった。まず、豆の皮むきのための水が不足していた。
これはコロンビア製の水を使用しないで出来る機材を見つけ購入することで解決が可能と
なった。次に乾燥方法だが、これも専用のテラス作りを提案し、それらを改良し、やっと
量産体制に漕ぎ着けることができた。フィリピン ミンダナオ島サライ村の三角紙の場合は、
ゲリラから逃げてきた医者看護婦の夫婦が、この畑も出来ず、雑草しか生えない村でその
雑草を使って紙を作るというアイディアを考案した。セミナーを開催し50人でのめり込みな
がら紙作りに打ち込んだが、質は粗雑のままでスタッフも数人にまでなってしまった。
そこでクジを売って資金集めをしたり、バレンタインカードを作成し、話題になった。
その後、押し花を利用した和紙作りの技術が参考になるのではと思い、日本の和紙作り師
を紹介。グラスカッターも提供し、今では、2000人の町で400人を雇用する町の中心的
な産業となった。
一般のメーカーや会社のキーワードは、大量生産/大量消費、ハイテク、グローバル、規格、
効率、競争、利益なのに対し、一方、第3世界ショップは、少量生産/少量消費、ローテク、
ローカル、規格外(個性)、共創、共感というコンセプトに感心させられるところが多々
あった。

また起業支援の紹介も行われた。WWBジャパンで行っている市民事業ビジネススクールだが
習志野で女性向け創業塾が行われている。受講生の必須項目として、未来計画のプレゼン
と夢作文の作成がある。そこから1000人の起業家が生まれ、失敗は今のところない。
ガーデニング、料理の話題に的を絞った英会話教室の成功例も紹介された。
第3世界ショップでは、インターン制度もあり、そこで物流、販売、仕入、開発を勉強する。
最初の90時間はボランティア。その後、時給800円。そのほか、起業相談も行われている。
竹広氏の講話から、右肩上がりの経済成長が終わり、混沌としている現世に、新しい流れを
見るような気がした。
その後の懇親会に最後まで付き合って頂き、すっかり溶け込んで話をすることも出来た。
ありがとうございました。
(記 岩永研一)

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